11月29日(土)に【土曜セミナー】中小企業診断士のための「自分でできる確定申告」実践セミナーを受講しました。その気づきについて共有したいと思います。
意外と誤解されています ― “確定申告”は節税よりもまず “経営力” を高める仕組みです
毎年の恒例行事である“確定申告”。
「経理担当に任せている」
「顧問税理士さんがやってくれているから大丈夫」
そう思っている社長は多いですが、実は 確定申告は社長の経営判断に直結する“経営のスイッチ” です。
税務のためだけの手続きと思われがちですが、
確定申告の本質は “会社の儲けの構造を見える化し、改善すべき場所を明確にすること” にあります。
今日は、確定申告のセミナー(税理士×診断士による実務的な内容)から、
特に知っていただきたい 「経営に効く確定申告の見方」 をまとめて共有します。
確定申告は“全ての所得を1つにまとめ直す”作業
確定申告は、1/1〜12/31までの
すべての所得を集計し、最終的な税金を確定する仕組み。
これは副業や不動産所得、事業所得などすべて含みます。
セミナーでも強調されていた通り、
「年末調整が終わっている=確定申告不要」ではありません。
特に注意が必要なのは以下。
✔ 副業・兼業で年間20万円超の“所得”がある
(※収入ではなく、収入−経費=所得)
✔ 複数の会社から給与を受け取っている
✔ 年間所得が2,000万円を超える
✔ 医療費控除・住宅ローン控除など還付申告をしたい
これらはいずれも、社長自身のケースでも家族のケースでも関わってきます。
社長が最も誤解しやすいのは「経費」の考え方
セミナーでは「経費」に多くの質問が集まっていました。
特に社長が陥りやすい誤解がこれです。
❌「仕事に関係していれば全部経費にできる」
⭕「説明できる“合理性”があって初めて経費になる」
たとえば…
● スーツ代
原則NG。「私服では着られない明確な理由」が必要。
(会社ロゴ入り・特殊用途など)
● 一人ランチ
原則NG。「プライベートと切り分け不可」という判断。
ただし、作業スペース代など合理性が説明できれば例外も。
● 自宅兼事務所の家賃
OK。ただし「割合(按分比率)」の合理性が必須。
面積基準・時間基準などを“継続して”使用することが重要。
経費判断の本質は「再現性のある説明ができるかどうか」。
税務署は「正しい経費」を否認しません。
逆に「説明できない経費」は疑われます。
青色申告は“中小企業に最も相性の良い節税制度”
セミナーの中で何度も強調されていたポイントがこれです。
青色申告を使わないのは、節税の“取りこぼし”が大きすぎる
青色申告をすると:
✔ 最大65万円の特別控除
✔ 赤字の3年間繰越が可能
✔ 家族への給与を経費化できる(青色事業専従者給与)
✔ 30万円までの備品を即時経費処理
「帳簿が難しそう」と敬遠する社長が多いですが、
今はクラウド会計でほぼ自動化できます。
青色申告を使う企業と使わない企業では、
5年後の手元資金量に大きな差が生まれます。
確定申告で“必ず”見なければならない3つの数字
確定申告書は税務署に提出するだけでなく、
経営者にとっての重要な経営資料でもあります。
特に見るべきポイントはこの3つ。
① 所得(儲けの本体)
収入−経費=所得。
「年商は伸びているが所得が増えない会社」は、
コスト構造を疑う必要があります。
② 所得控除(家計の構造と密接)
住宅ローン控除、扶養控除、社会保険料などは、
“家計の状態”を反映する項目です。
家計は会社のリスク耐性に直結します。
③ 課税所得(税金が決まる最終ライン)
ここまで来て初めて税率がかかります。
セミナーで解説されたように、
税率は“境界線を少し超えただけで急上昇するわけではない”
という累進課税の仕組みを理解しておくと、
「どのラインを目指して利益調整すべきか」が見えてきます。
確定申告の本当の価値は“経営の解像度を上げること”
確定申告をきちんと理解すると、
会社の以下の点が鮮明に見えるようになります。
どの経費が本当に事業を伸ばしているか
どの事業・顧客が高粗利なのか
どこにムダが潜んでいるのか
使うべき時間とやめるべき時間が何か
つまり、確定申告とは
“節税のための手続き”ではなく“経営改善の起点” なのです。
まとめ:確定申告は“社長の未来の選択肢”を広げる作業
確定申告は義務ではありますが、
同時に社長にとっては 「数字で経営を見る訓練」 でもあります。
正しく経費を整理できれば、利益構造が見える
青色申告を使えば、将来の資金繰りが安定する
数字を読む力がつけば、意思決定が早くなる
確定申告を理解すると、
会社は毎年必ず強くなります。
もし、
「うちの経費の判断は妥当?」
「青色申告に切り替えるべき?」
「数字の見方を整理したい」
などがあれば、気軽にご相談ください。
気づきを“経営改善”へつなげるお手伝いをします。


